福岡高等裁判所宮崎支部 昭和26年(う)451号 判決
本件記録中の被告人に対する知覧税務署長山口国義名義の告発書によると、「被告人は鰹節製造業をなす者で本田親春はその業務一切を担当する者であるが、その業務に関し物品税逋脱の目的で昭和二三年四月五日より同年九月日不詳迄の間に第一種物品戊類税番八十八号該当の調味料鰹節七百十三貫八百匁、税込移出価格七十六万七千五百七十九円五十銭を移出販売しながら、その製造、移出した事実を所定の帳簿に記載せず毎月移出価格申告をなさないでその税額十二万七千九百二十八円の物品税を逋脱していたものであつて、右の所為は物品税法第十六条に違反し、同法第二十二条を適用し、同法第一八条に該当処分せらるべきであると認める」旨の記載があることは明らかである。思うにある犯則事実が告発されたかどうかということはあくまでも告発書の記載自体によつて判断すべきであつて、他の証拠をもつて判断の資料とすることは許されないものであり又右判断に当つては告発書に記載せられた犯則事実を基準とすべきであつて、告発書に記載せられた罰条の如きは単に告発者の犯則事実に対する法律適用上の意見を示したに過ぎないものであるから、必ずしも判断の基準となるべきものではないと解すべきであるしかして、右告発書の記載のうちには被告人の業務担当者において移出販売した物品につき毎月の移出価格申告をなさなかつたいわゆる単純不申告の犯則事実も明記せられているのであるから、右犯則事実についても告発があつたものといわなければならない。原判決が告発書に右単純不申告の犯則事実が記載せられていることを認めながら、告発書記載の罰条や他の証拠を判断の資料として右犯則事実については告発がないものと断じ、ひいて右犯則事実を公訴事実とした本件公訴は形式的訴訟条件を欠くものとしてこれを棄却したのは不法である。